古川いくお 木のゼミナール

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古川いくお 木のゼミナール

2010年5月12日

 

   テーマ 「木器(もっき)」         
 
1.「木器」とは?⇒ 人類が生活に使用した木製品のことであり、考古学的には石器、土器、鉄器、銅器、骨器と同様に、遺跡や遺構から出土する木材遺物や木製品を指す。 木製品は腐りやすく、これまでは考古学的に価値のある良好な遺存例が乏しかったため、古代生活文化の復元研究も限られたものとなっていた。 近年、低湿地の遺跡や遺構から遺存状態の極めて良好な「木材遺物(木器類)」が多量に発見されるようになり、「木器研究」に注目が集まりつつある。
 
 
2.木器の「出土状況」は?⇒ 低湿地遺跡や遺構(青谷上寺地遺跡)からは、「嫌気的・飽水・遮光状態」で出土するため、組織や木器形状の遺存状態が良好である。 一方、丘陵地の集落址遺構(南谷大山遺跡や笠見第3遺跡)の焼失住居跡からは炭化材が出土する。 炭化材は組織の遺存状態はよいが、部材形状は判別しにくいことが多い。 これらの木器類、とくに建築部材類は、「古代建築様式(竪穴住居、掘立柱式建築)の推定・復元」に注目を集めている。 
 
 
3.木器の「年代」は?⇒ 年輪年代学的方法が精度は最も高いが、これには樹種毎に「暦年標準曲線(マスターカーブ)」なるものが必要である。 14C年代測定(炭素同位元素による年代測定)も±50年程度の誤差で決定できるが、設備が高価である。 一般には、木器類と同時に出土する石器や土器の紋様や形式から「製作年代、時代」を判定している。
 
 
4.木器の「用途(器種)」について⇒ 木器の用途を正確に決めることは困難である。 伊東隆夫ら(1990)は、国立奈良文化財研究所編纂「木器集成図録 近畿古代編(1984)」及び「同図録 近畿原始編(1993)」の分類区分に準じて、木器を26の製品群に分けている。 1)建築材、2)土木材、3)工具、4)農具、5)紡織具、6)運搬具、7)漁撈具、8)武器、9)馬具、10)服飾具、11)容器、12)カゴ編物、13)食事具、14)文房具、15)遊戯具、16)祭祀具、17)埋葬具、18)発火具、19)建築模型、20)雑具、22)加工材、23)用途不明品、24)炭化材、25)自然木、26)仏像。
 
 
5.木器の「樹種(材種)」について⇒ 湿潤木器と炭化材とでは、樹種の鑑定方法は異なる。 いずれも、注意深く切り出した試料小片(あるいは切片)の3断面(木口面と 柾目面と板目面)の顕微鏡観察によって、木器を構成する「木材細胞の種類と配列」ならびに「細胞壁の形態的特徴」に基づいて「種名(あるいは属名や科名)」を鑑定する。 これには「木材解剖学(組織学)」の知識が必要である。
 
 
6.「古代山陰地方の出土木器」の特異性は?⇒  古代山陰地方(主に弥生時代と古墳時代)の「いわゆる出雲的世界(出雲、伯耆、因幡地方)」から出土する「木器の特異性」は何か? また「樹種と用途」の間に関連性(樹種選択性)はあるのか? ・・・・この地方に特有なもの:三つ刃鋤(スギ製、目久美遺跡)、漆塗り花弁模様付高坏(ケヤキ製、青谷上寺地遺跡)、蓋付容器(ヤマグワ製、青谷上寺地遺跡)、漆塗り装飾匙(ケヤキ製、栗谷遺跡)、完形の丸木舟(スギ製、東桂見遺跡)、掘立柱式建築部材(スギ他、青谷上寺地遺跡)など。
 
 
 
 


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