古川いくお 木のゼミナール

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2009年7月22日

 

   鳥取木工研第235回例会(2009年7月21日開催)で林 知行氏((独)森林総合研究所・研究コーディネータ)は「知って得する・人に教えたい 木と建築の知識」と題して、木材のスゴいところ、木についての俗説と真実、など木材に関わった研究者ならではの興味深いお話をされた。そのなかで、氏は「木材はスゴいけど、センダン(剪断)力と割裂には弱いので、木材を使うときには注意してください」と指摘された。そのとおりである。木は軽い割りに強いの(比強度は大)であるが、木に剪断力が作用すれば(というより、木材に外力が働けば木材細胞壁内あるいは木材細胞間に剪断応力が必ず発生する)、これによって木材細胞間(実際にはS1層とS2層の境目)が剥離しやすい状態になる。この特性は、「木材は(乾燥応力や成長応力によって)繊維に沿って裂け易いとか割裂し易い」といった材質的な欠点と考えられがちである。
しかし、木材細胞壁のフラクトグラフィー研究(破断面解析)によれば、このS1層-S2層間での裂けや細胞間での剥離は、木材のねばり強さ(靭性)と深く関わっている。木材が破壊するときに、この「裂け」や「剥離」が発生しなければ、木材はガラスのように脆く、一瞬で破損するであろう。この「一瞬で破壊する」ことを防いでいるのが、これらの裂けや剥離なのである。もっと細かく言えば、木材が破壊するとき、細胞壁を破断しながら進行している亀裂の先端ではミクロな裂けや剥離を伴うことによって、亀裂伝播速度を遅くし、その分だけ破断に至るまでのエネルギーを大きくすることで、靭性を高めているのである。実際に、全く正常で健全な木材の細胞壁破断部にはたくさんのトゲ状、裂け状の破壊形態が認められるが、熱や酵素によって劣化した木材の細胞壁破断部にはそのような破壊形は一切見られず、まるでガラスが真っ二つに割れたような破面をしている。
したがって、木材が剪断力や割裂に弱いことの別な側面として、木材に特有の靭性、ねばり強さを付与するという重要な働きのあることを忘れてはならない。
 
なおこの日、林 知行氏は、「エンジニアードウッドとかエンジニアリングウッドの誤解が世に蔓延している」ことや、「スギ材の需要拡大には集成化しかない」ことや、「炭素循環と輪廻転生の話」や、「葉枯らし材のウソとマコト」など興味ぶかいお話もされましたが、ここでは割愛いたします。そのかわり、氏のお話を聞く機会があれば是非ご参加されることをお奨めします。


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